病気について


ROHHAD症候群について
急性発症肥満
低換気(呼吸異常)
視床下部および内分泌機能の異常
自律神経機能不全
神経節細胞腫(腫瘍)
その他の症状
麻酔薬について


ROHHAD症候群について


ROHHAD

の名称は主症状の頭字語です

急性発症肥満  Rapid onset Obesity
低換気(呼吸異常) Hypoventilation
視床下部 Hypothalamic
自律神経機能不全 Autonomic Dysfunction


その他の症状で、神経節細胞腫(Neuro Endocrine Tumors)の発生率が高いことから別名「ROHHADNET(ローハッドネット)症候群」ともいわれています。

ROHHAD症候群の確定症例は現在、世界中で100例ほどですが、確定診断に至っておらずROHHADの可能性があるとして治療されている子どもたちは他にも確認されているため、ROHHADに影響を受けている子どもは100例を超えると考えられています。


ROHHAD症候群は、日本国内の医学論文で2007年に初めて詳細に報告された新しい疾患概念です。

現在のところ、この疾患は、日本国内で「小児慢性特定疾病」や「指定難病」として指定されていません。

この希少疾患は死亡率が高いため、致死的疾患として認識する必要があると論じられています。


現在まで各国で原因遺伝子の解析研究などが進められていますが、病因は不明であり治療法は確立されていません。


ROHHAD症候群は、症状が多種多様であるため、複数の診療科をまたがり、早期診断につながりにくい現状があります。

そのため、「多くの臨床医がROHHAD症候群を認識、疑い、鑑別すべきである」とされていますが、小児科医の認識はまだまだ十分ではないとされています。

ROHHAD症候群について

久富隆太郎ら、「急激な体重増加と低ナトリウム血症を認めたROHHADの一例」

(日本小児体液研究会誌 vol.6 Page19-22.2014)より一部デザイン変更の上引用

ROHHAD症候群について

急性発症肥満

急性発症肥満  Rapid onset Obesity

出生時は健康体で、平均的な体形をしていた子どもが、以前と変わらない食事や生活をしていても、半年から1年の間に10kgから15kg体重が増加します。

急激な体重増加には注意が必要です。



対症療法


  • 肥満は呼吸状態を悪化させるため、食事管理を徹底する必要があります。

  • 深呼吸や有酸素運動は有効です。

  • 体の大きさによっては心肺停止の危険性やリスクが増すため、一部の患者には運動が制限されることもあります。


低換気(呼吸異常)

低換気(呼吸異常) Hypoventilation
低換気(呼吸異常)

肺自体は健康ですが、視床下部の障害により、呼吸に異常が生じます。

低換気(呼吸異常)

体内に酸素が不足していたり、二酸化炭素が蓄積しているにもかかわらず、それに気づくことは、難しいです。

低換気(呼吸異常)

酸素投与だけでは、二酸化炭素が排出されていないため、具合が悪くなることがあります。

低換気(呼吸異常)

呼吸器を装着した状態で酸素を投与し、二酸化炭素を排出することで、体の良好な状態を維持します。

肺自体は健康ですが、呼吸に異常が現れ始めます。

呼吸器の症状は深刻で、蘇生を要するような呼吸停止状態に陥ることもあります。


通常、私たちは呼吸によって空気を吸い込み、肺に酸素を送り込んで、二酸化炭素を排出するガス交換作業を行っています。(この作業を換気といいます)

肺に酸素がうまく取り込めずに低酸素状態に陥れば、息苦しさを感じます。


しかし、ROHHADの場合は、肺でのガス交換がうまくいかず、「低換気」と呼ばれる状態に陥ることがありますが、自覚症状がありません。

この状態は「高二酸化炭素血症」「低酸素血症」と同様に深刻な状態です。


低換気症状は、睡眠中に陥る傾向がありますが、深刻な場合には、覚醒中にも低換気が起こることがあります。

一方で、低換気症状が現れない場合もありますが、今後の経過を注意深く観察する必要があります。



対症療法


低換気の治療には、低換気の程度に応じて、以下のような対症療法があります。

  • カニューレによる酸素投与

  • BIPAP(マスクタイプ)装着による換気方法

  • 気管切開をして常時人工呼吸器を装着する換気方法

早期段階でこれらの換気サポートを開始することが、非常に重要です!!


低換気状態では、体が非常に疲れやすくなり、眠気が強くなることがあります。

しかし、酸素投与やBIPAPなどの呼吸器を使用せずに眠らせることは非常に危険です。うとうと状態やお昼寝時にも最善の注意が必要です。

低換気(呼吸異常)

近年、人工的に横隔膜を動かす装置を体内に植込み、横隔膜に電気による刺激を行い呼吸補助を行う「横隔膜ペーシング」という新しい治療法があります。

しかし、国内ではROHHADに対するこの治療法の実例報告はなく、安全性が保障されていないため、ROHHAD患者に対しては実施されていません。

視床下部および内分泌機能の異常

視床下部 Hypothalamic

  • 副腎不全
    複数のホルモンに異常が生じ、副腎不全となることがあります。

  • 尿崩症
    部分型尿崩症も多くみられます。

  • 多飲症
    多飲症によって頻尿、口渇、喉の渇きが引き起こされることがあります。

  • ナトリウム(Na)バランス異常
    「高ナトリウム血症」または「低ナトリウム血症」となることがあります。

  • 高プロラクチン血症
    「高プロラクチン血症」となることがあります。

  • 過食症
    空腹感と食欲が異常に増加し、健康的な食事を十分に食べているにもかかわらず、空腹感を感じることがあります。

  • 甲状腺機能低下
    複数のホルモンに異常が生じ、甲状腺機能低下することがあります。

  • 成長ホルモン分泌低下
    成長ホルモン分泌低下となることがあります。

  • 寡飲症
    寡飲症により喉が渇かないため、水分を摂取することが困難な場合があります。

  • 多尿症
    「多尿症」となることがあります。


ROHHAD患者は、これらの視床下部および内分泌異常の一部、または複数を持つ場合があり、また症状の程度も患者によって異なります。



対症療法


  • それぞれの症状に合わせた治療が必要です。
    食事量や水分摂取量の調整については、ご家族の管理と周囲のサポートも必要です。


自律神経機能不全

自律神経機能不全 Autonomic Dysfunction

  • 眼球運動障害
    斜視や乱視などの眼疾患が起こります。瞳孔の大きさに違いがでることもあります。

  • 温度調節障害
    高体温または低体温になることがあることがあります。

  • 胃腸障害
    慢性的な便秘や下痢になることがあります。

  • 痛覚異常
    痛みを感じるべき時にほとんどまたはまったく痛みを感じないことがあり、痛みに対する耐性が高いことがよく見られます。同時に、予期せぬ場合には耐え難い痛みを感じることもあります。

  • 発汗異常
    多量の発汗が生じることがあります。

  • 四肢冷感
    手足が極端に冷たくなり、血色が悪くなることがあります。

  • 徐脈
    心拍数が遅くなる場合や速くなる場合があることがあります。


ROHHAD患者は、これらの自律神経異常の一部または複数を持つ場合があり、また症状の程度も患者によって異なります。



対症療法


  • 斜視や乱視は、その程度によっては矯正手術が必要になる場合があります。

  • 外気の影響を受けやすいため、適切な着衣が必要です。
    多汗によって濡れた着衣が原因で体温低下が起こりやすいため、こまめな着替えが必要になる場合があります。

  • 便秘の場合、薬物治療により便を溜めないことが重要です。
    慢性便秘が続くと腸閉塞を引き起こす場合があります。
    また、より重度の胃腸障害の場合には手術が必要になることもあります。

  • 徐脈は内服、場合によってはペースメーカーで治療されます。


神経節細胞腫(腫瘍)

神経節細胞腫(腫瘍)Neuro Endocrine Tumorsは、腹部、胸部、または交感神経に沿った場所に多く見られ、あらゆる年齢で発生する可能性があります。


発生確率は40%と高いため、今後の経過を注意深く観察する必要があります。

腫瘍は、良性または悪性の場合があります。



対症療法


  • 神経節細胞腫(腫瘍)は、薬物治療や切除手術を行う場合があります。
    発生確率が高いため、定期的にMRIスキャンで腫瘍の有無を確認する必要があります。

  • 免疫抑制療法は、有効な治療法の一つである場合があります。


その他の症状

ROHHAD患者のすべての子どもが発作を経験するわけではありませんが、てんかんなどの発作が症状として存在する可能性があります。


ROHHAD患者の中には、自閉症スペクトラムと診断されている子どももいます。

また、ROHHADに関連する行動障害、気分障害、発達障害がいくつか報告されています。



対症療法


  • 個人に合わせた多様な治療法があり、それは症状によって異なります。
    療育を受けたり、様々な療法や薬物療法などが使用される場合があります。
    最適な治療法は、専門家との相談が必要です。


麻酔薬について

麻酔は、治療の際に痛みを和らげ、手術の際には意識あるいは感覚が失われるため痛みをなくし、手術による身体への負担から患者を守るものです。

しかし、ROHHAD症候群の患者に対して麻酔薬を使用する際には、特別な注意と配慮が必要です。

ROHHAD症候群患者は、睡眠中に低換気症状に陥る傾向があるため、麻酔薬を使用すると呼吸状態が悪くなり、麻酔投与後に急変する可能性があります。

世界中で多数の報告があり、呼吸数の減少、血液中の酸素量の減少、血液中の二酸化炭素量の増加、そして最終的には無呼吸になる例があります。

麻酔を使用することは可能ですが、安全に麻酔をかけるためには医師が課題を認識する必要があります。

検査や手術には、麻酔が必要不可欠ですが、ROHHAD患者にとっては、麻酔による心肺停止という二重の恐怖との戦いとなってしまいます。

そのため、ROHHAD症候群患者は、麻酔による悪影響が及ぶ可能性があることを必ず医師に伝えておく必要があります。

医師がROHHAD症候群の患者であることを把握することで、麻酔薬の投与量や種類などを適切に調整することができ、患者の呼吸状態を確認しながら手術や治療を行うことができます。

ROHHAD症候群患者にとって、安全に麻酔を投与し、安全な手術や治療を受けるためには、医師がROHHAD症候群患者であることを知っていることが重要であり、不可欠です。

2018年にスペインのマドリードにあるCajal Universityの臨床チームは、「小児の麻酔。ROHHAD症候群の患者」という論文を発表しており、ROHHAD症候群の患者に対する麻酔管理について詳しく説明しています。


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